この記事の最後の方に書いた「Nocturnal Animals」、元旦に観てきました。
この映画は、1993年に出版されたAustin Wright の小説「Tony and Susan (ミスティック原稿)」が原作になっています。*"nocturnal animal"は夜行性動物の意。
<ネタバレなし>
<ストーリー>
アートギャラリーのオーナーで裕福な生活をおくるスーザンですが、不貞を働いている夫との夫婦仲は冷え切っています。ある日突然、20年前に別れた元夫エドワードから小説の原稿 "Nocturnal Animals" が届きます。映画では、スーザンがそれを読む進めていく「小説の世界」と「現実」が交互に出てきます。
「小説の世界」では、主人公トニーが妻娘とテキサスを旅行中に、地元のギャングに襲われ、二人をさらわれてしまいます。自身も怪我を追いながらも、地元の警察官と必死に二人を探し始めますが・・・。
<監督>トム・フォード
<キャスト>
エイミー・アダムス:スーザン
ジェイク・ギレンホール:エドワード/トニー
マイケル・シャノン:ボビー(警察官)
アーロン・テイラー=ジョンソン:レイ(ギャング)
ローラ・リニー:スーザンの母親
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この映画、冒頭の美醜シーンでまず居を衝かれます。ファッション・デザイナーでもあるトム・フォード監督の美意識てものは、人並み外れてるのでしょうね。
きれいで明るく華のあるエイミー・アダムスですが、この映画の間中、一度も笑顔がなく終始暗く不安を抱え、そのうち不眠症になるのでますます不健康そうに見えます。
原作では、スーザンは「英語教授」という設定でしたが、トム・フォードは「ギャラリーのオーナー」に設定を変えたので、彼女のファッション、住んでいる部屋や家具、職場、どれもこれもハイセンスで素敵でした。やはり職業柄、野暮ったいスーツとか着せたくなかったんでしょうね、監督。
主演の二人以外では、末期の肺がんを患う定年前の警察官を演じたマイケル・シャノンが印象的でした。肺がんなのに煙草スパスパ、テキサス訛りで遠慮のないしゃべり。とてもbelievable(演技ではなく本物だと信じてしまう)でした。これで助演男優賞にノミネートされるかも、と思ったほどです。
ちょっと水道橋博士に似てますね |
ところが、ゴールデングローブ賞で助演男優賞にノミネートされたのは、ギャングのレイを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンで、びっくりしました。というのは、この役は映画を見た人が「嫌悪感」しか抱かないろくでなし。でも、これほど観てる者に「嫌悪感」を持たせるということは、彼の演技がやはりbelievableだったわけですね。*アーロン自身もこの役を受けるかすごく迷ったそうです。
そして、アーロンは助演男優賞を受賞しました。下馬評では、"Moonlight"のMahershala Ali が有力だったので、周囲も驚いてましたね。この時初めて彼がイギリス人だと知りました。映画ではテキサス訛りの米語をナチュラルに話してたんです。俳優さんてほんとすごい!
暴力的で汚くて、悪役の中の悪役! |
みごとゴールデングローブ賞を受賞。若干26歳 |
個人的に好きな演技派女優ローラ・リニー。実年齢はエイミー・アダムスと10歳しか違わないんですが、いかにもマンハッタンのUpper-East Sideにいそうなスノッビーな母親役を好演してました。
全体的に暗く、暴力的な部分もあり、元旦に見るにはふさわしくない映画でしたけど、スリリングなストーリーも演技力も最高で、何より「どうして小説を送りつけてきたんだろう?」「この小説のストーリーの意味は?」などいろいろ想像をめぐらし、非常に頭を使う映画でした。
ヴィネツィア映画祭でのTeam "Nocturnal Animals"。左から、Jake Gyllenhaal, Robert Salerno (Producer), Aaron Taylor Johnson, Amy Adams, Tom Ford (Director), Ellie Bamber |
エイミー・アダムスのローズ・ゴールドのドレスとジェイク・ギレンホールのダブルのスーツは、"TOM FORD"。監督にハレの日の衣装までデザイナーしてもらえるのは、この映画にキャストされた特権ですね。
アカデミー賞のノミネート発表は1月24日ですが、さて賞レースには食い込んでいるでしょうか? 日本公開はまだ未定ですが、ぜひ公開されますように。
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