March 7, 2017

アカデミー賞の大ハプニング! ステージ・マネジャーの語る舞台裏

先日のアカデミー賞の大フィナーレ「Best Picture」の発表時、最初に発表された作品が「まちがいでした」と訂正された珍事が起こりました。

名誉ある「Best Picture」のプレゼンターは「俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)」で主演したウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイ。この映画が公開されてからちょうど50年記念だったんですね。

華のある二人の登場に会場は盛り上がります

1967年公開「俺たちに明日はない」のお二人
Bonnie役のダナウェイさんのファッションの影響で、ミニ・スカート全盛時に長めのスカートとベレー帽が流行ったそうです。

さて、授賞式ですが、9つのノミネート作品の短いフィルムが紹介された後に、ビーティさんが作品を読み上げようと「The Academy Award..」まで言いますが、ためらって、またカードに目を落とします。隣のダナウェイさんがベーティさんに何かささやくと、彼は彼女に大仕事を譲る感じでカードを見せ、ダナウェイさんがにこやかに「La La Land!」とアナウンスし、場内が沸きます。オーケストラは「La La Land」のテーマ曲を演奏し、Team La La Land がステージに上がり、3名のプロデューサーが受賞のスピーチをします。二人目のプロデューサーのスピーチの途中で、ヘッドセットを付けたスタッフ(通常、絶対テレビには映ってはいけないステージ・マネージャー)が登場して、封筒を確認してなんだか不穏な雰囲気になってきました。
こちらのYoutubeをご覧ください。2分過ぎたあたりからバタバタしてきます。

Moonlight or La La Land?



バタバタでしたけど、「La La Land」のプロデューサー、ジョーダン・ホロビッツ氏が「間違いでした。受賞したのはMoonlightです。ジョークではありません」とアナウンスし、「自分からトロフィーを渡したい」と場を仕切ります。ここで、これまでいろいろな映画賞で注目されライバル同士だった2チームに”強い絆”が生まれた雰囲気で、ステージでハグしあう俳優、監督、スタッフの姿が見られます。会場からも温かい拍手が送られ、Jimmy Kimmelは「悪いのは僕です。何かしでかすんじゃないかと思ってたんです。アカデミー賞には二度と戻ってこないと誓います」と幕を閉じました。こんな前代未聞のトラブルにも即ジョークで返すKimmel。MCの鏡です。

Youtubeで話してるように、ビーティさんたちは1つ前に発表された「Best Actress」の封筒を渡されたんですね。カードには「Emma Stone, La La Land」と書かれていて、La La Landが本命と言われていたし、別のカテゴリーの封筒を渡されたなんて、権威あるアカデミー賞でそんな間違いが起こるなんて露とも疑いませんから、「La La Land」と発表してしまったんですね。
最初テレビで見た時は、たいへん失礼ながら、ご高齢のお二人がミスをしてしまったのかと思ってしまいましたよ。大御所を一瞬でも疑ってしまって、ほんとにごめんなさい。


絶対漏れてはいけないトップ・シークレット
翌日の日本の番組で、中堅芸人の方が「ADさんもすごく疲れてると思うけど、封筒はちゃんと確認して渡してもらわないとね」と発言していて、そういう認識なんだ、と知りました。
アカデミー賞は「映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、AMPAS)」によって運営されていて、現在6000人以上いる会員の投票によって受賞作・人が選ばれます。そしてその集計は外部に委託していますが、外部とはいえ、ぜったい漏れてはいけないトップ・シークレットですから、企業の秘密を守る監査法人に委託してきました。89年続いてきたアカデミー賞で、83年間PricewaterhouseCoopers (PwC)が請け負ってきました。ちなみに、PwCは日本法人もあります。
会社内でもこの仕事に関わるのは二人だけで、その二人が結果の書かれた封筒を鍵つきのブリーフ・ケースに入れて会場に持ち込みます。結果を知っているのは全世界でこの二人だけ。とても徹底した管理体制なんです。ちなみに、彼らは結果を紙に書き写すことも禁止されているので、24部門の結果をすべて頭に記憶しなくていけないんですね。


ブリーフケースの中に各24通の封筒が入っています。
1組はスペア

プレゼンターはステージの両ウイングからも出てくるので、PwCの二人はそれぞれステージの左と右にいて、封筒を渡していきます。ステージ・レフトにはマーサ・ルイーズさん、ステージ・ライトにはブライアン・カリナンさんが位置します。
(*ステージ・レフト、ステージ・ライトは”シアター専門用語”で、観客席側とは左右が逆になります。)

最後から2部門目、「Best Actress」のプレゼンターのデカプリオさんはステージ・レフトからのエンターだったので、マーサさんが封筒を渡します。そして、受賞したストーンさんとデカプリオさんはステージ・ライトへ退場していきます。
最後の「Best Picture」のビーティさんたちはステージ・ライトからのエンターで、ブライアンさんから封筒を受け取ります。そうなんです、ブライアンさんが自分のかばんに残っていた1つ前の「Best Actress」の封筒を間違って渡してしまったんですね。
のちに、ウイングでブライアンさんがビーティさんに封筒を渡す前に、近くを通ったストーンさんの写真を撮ってTweetしていたことが判明。ウイングでそういう行為は禁止されていたんですが、超セレブを見て浮き足立ってしまったんですね。そしてこの大混乱。

ステージ・マネージャー Gary Natoliさんの語る舞台裏
長年アカデミー賞のステージ・マネージャーを務めてきたGary Natoliさんは語ります。「アカデミー賞の1日前にブライアンと話した時、"万一間違ったウイナーが発表されたら、受賞スピーチが始まる前にステージに出て行って訂正してくれ"と言ったら、”オッケー、そうするよ" と言ってたんだ
こういう大きなイベントではステージ・マネージャーが何人もいて、Natoliさんはリード・ステージ・マネジャーです。ショーの最後は、「Best Pictureの発表」→「受賞スピーチ」→「Jimmy Kimmelの閉めのスピーチ(観客席から)」の流れだったので、ダナウェイの「La La Land!」のアナウンスを聴いてすぐに、ステージ・レフトにいたNatoliさんはKimmelさんと観客席に向かいます。
*この時、マーサさんの近くを通りましたが、彼女はNalotiさんに何も言葉を発しなかったそうです。ショックで頭が真っ白になってしまったんでしょうか?

Kimmelさんは親友マット・デイモンの隣席から彼をコケにしたclosing speechをする予定だったので、Natoliさんはデイモン氏の奥様に一瞬席を移動してもらうお願いに行ったんですね。
この時ステージでは、「La La Land」のプロデューサーの喜びのスピーチが続いていました。作品名が読み上げられてから1分15秒後くらいに、ステージ・ライトにいたステージ・マネージャーから「ブライアン(PwC)が、”ベーティたちは正しい作品名をアナウンスしなかったと思う” と言ってるので、隣のマーサ(PwC)に封筒確認してもらって」との連絡がヘッドセットに入って来ました。自分はもうウイングにいないので、ステージ・レフトにいた別のステージ・マネージャーに連絡して、マーサの手にしていた封筒を開けさせてみると、なんとそこには「Moonlight」と!
部下のステージ・マネジャーに、「すぐアカウンタントをステージに上げて、訂正させろ!」と指示しても、「二人とも躊躇して出ていかない」との返事。それで、自分が出て行ったんだ。この時自分はブライアンの言葉から、”ダナウェイが作品名を読み間違えた” と思っていて、間違った封筒を渡されたとは知らなかったんだ。ステージでダナウェイが開けた封筒を探したら、受賞したホロヴィッツが持っていて、確認したら「Best Actress」の封筒だった。とにかく、「Best Picture, Moonlight」をアナウンスしないといけないので、正しい封筒をプレゼンターのベーティに渡したんだ。
ここからのことは、Youtube見るとわかりますね。


混乱のステージ。マット・デイモンかと思ったら、ブライアンさん。
赤いドレスがマーサさん。たいへんでしたね・・・

ビーティさんの左がNatoliさん。日本的な名前ですが、日本の血 0%て顔つきですね。Natoliさんは、「間違った作品名が読み上げられてから封筒を見つけるまで2分もかかっている。どうしてアカウンタントたちはすぐ出て行かなかったんだ!」とショックを受けてました。
ほんとうの結果を知ってるのはこの二人だけですからね。でも、この興奮の大観衆の中、「すみません、ほんとうはMoonlightでした」と、テレビ慣れしてない素人が出て行くのはハードル高すぎですね。前述したように、MCのKimmelさんも観客席にいたので収拾するのが少し遅れてしまいました。

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最初テレビで見た時は、「La La Land」プロデューサーのホロヴィッツ氏の機転が利いた対応が混乱を救った、というのが第一印象でした。でもその後このYoutubeを何度も見ると、彼はウォーレン・ビーティが再アナウンスするために渡された封筒を奪い取ってるじゃないですか! ビーティさんが悪ふざけしたのかと勘違いしたのか、ビーティさんとは目を合わせず、怒ったような顔をしていますね。

左)混乱の後、正しい受賞作品を読み上げようとするビーティさん 
(右)が、封筒は一瞬のうちに隣人の手に!

79歳のビーティさんは36歳のホロヴィッツさんが生まれる前からハリウッドで活躍してきた大御所なんですから、あの態度はよろしくないですね。もっとシニアに優しく接してほしいものです。
それから、間違った封筒を渡してしまったブライアンさんからの説明もないので、この時点でビーティさんたちの濡れ衣はすっかりとは晴れてませんでしたし、ほんとお気の毒でした。映画のタイトルよろしく「俺たちは悪くない!」と叫びたいところでしょう(笑)。

でもそんな心配は無用だったかも。ビーティさんは授賞式後の公式パーティー「Governors Ball 」に”間違えて渡された封筒”を握りしめてに登場したそうです。

この笑顔を見て安心しました。
大御所は小さいこと(?)は気にしない

おまけ
ミステイクがアナウンスされた時のセレブたちのリアクション顔

さて来年はどんなオスカーになるんでしょうね。プレゼンターのみなさんが封筒をしっかり確認することは間違いないですね。

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