January 29, 2017

イツァーク・パールマン ( Itzhak Perlman) 氏のバイオリン・コンサート

先週の土曜日に、世界的なヴァイオリニスト、イツァーク・パールマン氏のコンサートを聴く機会に恵まれました



パールマン氏は日本でも何度も来日公演をしてみえるので、ご存知の方も多いかと思います。パールマン氏は1945年8月生まれの現在71歳、イスラエルのテルアビブ生まれ。おもちゃのヴァイオリンを弾き始めたのが3歳の時。4歳でポリオにかかり下半身麻痺になってしまいますが、その後もヴァイオリニストになる夢をあきらめず、10歳で最初のコンサートを開きます。13歳の時渡米し、アメリカの人気テレビ番組「エド・サリバン・ショー」の「タレント・コンクール」に応募・出演して大絶賛を浴び、アメリカ移住を決めました。17歳でカーネギー・ホール・デビュー、19歳で国際コンクールで優勝し、アメリカのメジャー・オーケストラから共演以来が殺到。また、グラミー賞、エミー賞なども何度も受賞して、2015年にはオバマ大統領から「大統領自由勲章」を授与されました。日本初来日公演は1974年。

コンサートは、サンディエゴ・シンフォニー・オーケストラとの共演で、ダウンタウンのCopley Symphony Hall で行われました。ロビーに着くと溢れんばかりの紳士・淑女が歓談していて、クラシック音楽やオペラのコンサート会場が持つあの独特の華やいだ雰囲気が充満していました。レストルームから廊下には30メートルほどの列が! それもそのはずで、2,200以上の客席は満席でした。

エジプシャン様式のシーリングがひときわ目を引くロビー

2200以上のシートを持つオーディエンス席

コンサート前に音チェック中のシンフォニー団員


現在ウエストコースト・ツアー真っ最中のパールマン氏、1月はアリゾナ州、北カリフォルニア、その後パームスプリングス、サンディエゴ、コスタメサ、サンタバーバラ、ロサンゼルスという具合に、ご高齢にもかかわらず連日コンサートと移動スケジュールをこなされています。

コンサートのプログラムですが、今回のツアーではほとんどの会場でこちらの3曲を演奏されています。

- Beethoven: Sonata for Violin and Piano in F Major, No. 5, Op. 24 “Spring”(ベートーヴェン: バイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 Op.24 「春」)
- Schumann: Fantasistücke for Violin and Piano(シューマン:幻想小曲集)
- Stravinsky: Suite Italienne for Violin and Piano(ストラヴィンスキー:イタリア組曲)


ですが、サンディエゴだけはプログラムが異なり、コンサート・タイトルは「Bernstein, Pearlman, Hollywood」で、第一部は、サンディエゴ・シンフォニーによる"Symphonic Suite From On the Waterfront"(映画「波止場」からの交響組曲)の演奏。
*映画「波止場」の音楽は、世界的な作曲家で指揮者のレナード・バーンスタイン氏が作曲されました。

第2部でパールマン氏が登場し、下記の映画のテーマ曲や挿入曲を演奏されました。

“As Time Goes By” from Casablanca 「カサブランカ」
Love Theme from Cinema Paradiso  「ニューシネマ・パラダイス」

Theme from Far and Away 「遥かなる大地へ」
Out of Africa: Main Title 「愛と哀しみの果て」
“Marian & Robin” Love Theme from The Adventures of Robin Hood 「ロビンフッドの冒険」
Theme from Sabrina「サブリナ」
Theme from Schindler’s List 「シンドラーのリスト」
Tango from Scent of a Woman (“Por Una Cabeza”) 「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」



パールマン氏は、スピーディーな電動カートで登場し、それから、松葉杖を使ってソリストの椅子に移動します。ソリストの演台はステージから20センチくらいの高さがあり、少し移動に時間がかかりますが、氏は誰の手も借りません。オーディエンスはその一連の動きを見守るわけで、冒頭から人としての温かい感情がふつふつとわいてきます。と同時に、パールマン氏とオーディエンスの距離感がぐっと近くなった気がします。
着席すると、コンダクターがパールマン氏にヴァイオリンと弓を渡します。それから、パールマン氏がごそごそと何か探す仕草を見せ、「はい、これは君にね」という感じで、
指揮棒を若いコンダクターに渡すところで、会場からドッと笑いが起こります。

そして、有名な「カサブランカ」の "As Time Goes" から始まって、至上の演奏が1曲終わるごとにオーディエンスは惜しみない拍手で応えます。
「シンドラーのリスト」のテーマ曲の演奏が始まると、ヴァイオリンの美しい音色、パールマン氏のバックグラウンド、映画のシーンなどいろんなことが頭の中を駆け巡り、ハンカチが必要な状況に。斜め後の席からも鼻水をすする音が聴こえてきます。
ラストは「セント・オブ・ウーマン」の軽快なリズムのタンゴ “Por Una Cabeza”で、盲目の退役軍人を演じたアル・パチーノがタンゴを踊るシーンが浮かんできて、聴きほれているうちに終わってしまいました。

観客はすぐスタンディング・オベーションと盛大な拍手で演奏者を称え、パールマン氏は電動カートでサーと舞台袖へ。それでも拍手が止まず、氏はステージに戻って一礼され、また舞台袖へ。拍手が全然止まないので、結局3度もステージに戻ってきてくれました。演奏者、オーディエンス、会場環境、この3つがすべて揃った最高のコンサートでした。
パールマン氏は、現存する世界最高峰のヴァイオリニストの一人だと言われていますが、と同時に、音楽の素晴らしさを伝えるために存在する”特別な”音楽家なのでしょう。パールマン氏のコンサートを聴けた幸運に感謝です。

このコンサートが開催されたのは1月21日の土曜日、「大統領就任式」の翌日でした。奇しくも8年前の「オバマ大統領の就任式」では、パールマン氏はヨーヨー・マさん(チェロ)、アンソニー・マクギルさん(クラリネット)、ガブリエラ・モンテーロさん(ピアノ)と共に、19世紀の賛美歌「Air and Simple Gifts」を演奏されました。


このメンバー構成は、ジューイッシュ系アメリカ人、中国系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、そして写真には写ってないですが、ガブリエラさんは南米ベネズエラ出身で、アメリカの多様性を物語っています。移民が集まって成り立ってきた国、それがアメリカなわけで、新大統領が「外国人・移民排斥」を訴え続けて大統領選挙に勝利したことは非常に残念に思います。


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